日本第四紀学会
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2004年度研究委員会活動報告

2004年度は以下の5委員会が活動をおこなった。

層序・年代学研究委員会 (委員長:三田村宗樹)

 2003年7月に米国ネバダ州レノ市で開催された第16回INQUA大会で、それまでのCommissionが整理され5つに統合された。そのうちのひとつとして、従来のCommission on Stratigraphyを核として、Commission on Stratigraphy and Geochronologyが2003-2007 Inter-Congress periodのCommissionとして承認された(日本からは熊井がFull memberとして登録されている)。さらにこのCommissionに所属する次の5つのSubcommissionが承認された。

  1. Tephrochronology & Volcanism (SCOTAV). Field meeting planned August 2005.
    President Chris Turney.
  2. European Quaternary Stratigraphy (SEQS). Meeting planned for September 2005.
    President Mauro Coltorti.
  3. Asian Quaternary Stratigraphy (SAQS). President Nadya Alexeeva.
  4. Loess & Pedostratigraphy (SLAP). President Ludwig Zoeller
  5. Dryland Dating (SDD). Field meeting planned March 2005. President: Lewis Owen.

 Commission on Stratigraphy and Geochronologyの最初のMeeting で、PresidentのProf. Brad Pillans(Australia)を中心にして従来の組織が検討され、従来のSubcommission of Asia and Pacific RegionはChronology を含めて、Asian Quaternary Stratigraphy(SAQS)として継続することが承認された。このSubcommissionのPresidentにはロシアのDr. Nadya Alexeevaが推薦され了承された。INQUA大会終了後、この会に欠席だったDr. Nadya Alexeevaや従来のVice-Presidentと連絡しながら、新しいSubcommissionの再編成を行った。日本からはVice-Presidentに三田村宗樹が推薦された。2003-2007 Inter-Congress periodのSubcommissionの運営は従来どおり、Presidentを中心にして、幹事国である日本、中国、ロシアで原案を作成して、それをシンポジウムなどのおりに開催されるBusiness Meetingで決めて行こうと言うことになった。

 この Subcommissionの国内委員会として昨年度から層序・年代学研究委員会が組織され、第四紀学会会員に呼びかけたところ、従来の層序アジア太平洋層序研究委員会からの継続を含めて、現在まで約20名の委員が登録されている。当面の活動としては、2006年9月にロシアのウランウデ市で開催されるSubcommission of Asia and Pacific Region主催のシンポジウム(詳しくは第四紀通信Vol.12 No.3 2005参照)の準備と独自の行事の策定などである。(熊井久雄・三田村宗樹)

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海岸・海洋プロセス研究委員会 (委員長:海津正倫)

本年度は次年度以降の活動のための準備期間として、スマトラ沖地震津波の調査など各メンバーが個人的に活動を進めた。このため研究委員会としての活動費は請求しなかった。

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テフラ・火山研究委員会 (委員長:鈴木毅彦)

INQUA Commission on Tephrochronology (COT)は、1991年INQUA北京大会で承認されたCommissionであり、1987年に設立されたThe Inter-Congress Committee on Tephrochronology (ICCT)の流れを汲むものであった。1995年INQUAベルリン大会でのCommission on Tephrochronology and Volcanism (COTAV)への名称変更後も引き続き活動してきた。しかし2003年リノ大会をもってCOTAVは解散し、現在、COTAVは新しく組織された委員会であるStratigraphy and Chronologyのサブユニット(INQUA Sub-Commission for Tephrochronology and Volcanism: SCOTAV)として位置づけられている。

 2004年度におけるテフラ・火山研究委員会の活動として、「関東平野の形成史─最近のテフラ・地下地質・テクト二クス研究に基づくその探究─」と名づけたタイトルのもとに、3月中旬に一日間のシンポジウムと二日間にわたる野外集会を企画・開催した。シンポジウムは、地質科学総合研究連絡委員会第四紀学専門委員会(日本学術会議)との共同主催として企画され、3月13日に明治大学駿河台キャンパスにおいて開催した。計10件の講演からなるシンポジウムは、午前の部がテフロクロノロジーを中心とした講演、午後の部は関東平野に関連した諸テーマの講演であった。参加者は約75名であった。シンポジウムの成果をもとにした印刷物を現在企画している。野外集会は3月14日〜15日の日程で、青梅、多摩丘陵、房総半島、銚子を対象とした野外巡検として開催され、これら地域の堆積物とテフラの露頭見学を行った。参加者は、案内者5人を含めた計36名であった。これらの詳細についてはいずれも第四紀通信第12巻3号に掲載されている。このほか、2005年7月31日〜8月8日にカナダのユーコンにおいて、INQUA Sub-Commission for Tephrochronology and Volcanism (SCOTAV)による、International Field Conference and Workshop on Tephrochronology and Volcanism "Tephra Rush 2005"が開催される。日本国内からも多数の参加者があり、SCOTAVとの対応がなされる予定である。

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ネオテクトニクス研究委員会 (委員長:吾妻 崇)

 ネオテクトニクス研究委員会では、主に1)INQUA Intensity Projectに関するビジネスミーティングと、2)2004年中越地震野外集会を開催した。

 ビジネスミーティングは、2005年1月に兵庫県の北淡町で開催された北淡国際活断層シンポジウムにあわせて実施された。主な検討テーマは、INQUA Intensity Projectに対する日本における対応についてであった。INQUA Intensity Projectは、INQUA第16回大会(米国リノ市)においてPaleoseismisity小委員会で提案された、自然現象に基づいた世界共通の震度階を確立していく計画である。2004年8月にフィレンツェで開催された第32回IGCのビジネスミーティングにおいて日本に対する協力要請がなされ、北淡シンポジウムまでに対応方針を決めることとしていた。その会合にむけて、 Paleoseismisity小委員会が準備しているチェックシートへの記入について研究委員会内で協力を依頼し、試験的に2004年中越地震、1995年兵庫県南部地震等の調査事例を作成、報告した。

 野外集会は、昨年10月に発生した2004年新潟県中越地震の震源地周辺で行なった。2005年7月31日−8月1日にかけて2日間の行程で実施し、参加者数は案内者(吾妻 崇、太田陽子、鈴木郁夫)を含めて16名であった。この野外集会では、中越地震による強震動、液状化現象および地すべりによる災害と地表地震断層について現地討論を行うとともに、中越地方に分布する長岡平野西縁断層、長岡平野東縁断層、六日町断層帯、十日町断層帯を回り、活断層・活褶曲に関係した地形を観察し、活褶曲と活断層、そして地震発生との関係について議論した。

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高精度14C年代測定研究委員会 (委員長:中村俊夫)

 2005年3月末に、14C年代−暦年代較正データセットの最新版(INTCAL04)が発表された。旧版であるINTCAL98からの変更点を調べて、一般の14C年代ユーザーが利用し易くするために、研究委員会による公開シンポジウムの開催を検討したが、2005年の第四紀学会島根大会までに開催するに至らなかった。本年中に、INTCAL04の概要を理解して頂くための公開シンポジウムを開催したい。なお、島根大会のポスターセッションで、INTCAL04の概要を解説する予定である。

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